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LGBTが自分の性的指向や性自認などを打ち明けることを指す言葉、カミングアウト。この言葉の使い方自体に、特別視や差別意識が働いていないだろうか。本稿は「カミングアウト」を再考する。
近年耳にするようになったカミングアウト。LGBTの方が自分の性的指向や性自認などを人に打ち明けることを指して用いられる言葉である。原語である英語辞典の権威Oxford English Dictionaryによれば、元々は”come out of the closet”(クローゼットの中から出てくる、転じて、打ち明ける)という形で用いられた。意味は

“to admit (something) openly, to cease to conceal, esp. one’s homosexuality”

とある。筆者が訳すなら、「(何かを)公に認める。隠すのを止めにする。」という意味だ。そして、「何か」の部分に「同性愛者であること」が主に使われるようになったのだ。これが縮まって”coming out”(カミングアウト)になった。

違和感を覚えるのは私だけであろうか。LGBTに対しての差別意識がここに既に現れているように思えるのだ。

 

性的指向や性自認などを「言わない」=それらを「隠している」

 

という前提が見えないだろうか。確かに、意図的に「隠している」人もいると思う。だが、私が言いたいのは、マイノリティに対してのみ、「隠している」のだという意識を植え付ける言葉ではないか、ということである。

 

考えてみてほしい。性的指向や性自認などは十人十色である。多数派とされる「ストレート」――この言い方にも悪意があるようにも思える(※後述)――の人の中であっても、それらは人それぞれである。「タイプ」という話が分かりやすいであろう。細身の人がタイプの人もいれば、ふくよかな人がタイプの人もいる。高身長がタイプだという人もいれば、低身長がタイプだという人もいる。性格が大事だ、容姿が大事だ、というように注視する点は人それぞれ異なる。性的指向となれば、それこそみんなが違う。

だが、これらを言われないことに対して「隠している」と感じるであろうか。多くの人は、初めて性的指向を打ち明けられたとき、「意外!」程度の感情に留まるであろう。(女性が「低身長の男性が好き」と打ち明けた時などを想像してほしい) また、自分が言わないことに「隠している」と感じるであろうか。いや、言うべきものとも捉えていないであろう。

 

LGBTの場合はどうだろう。ストレートの人は、「実は、ゲイなんだ」と友人に言われた時を想像してほしい。上記とは違い、「意外!」以上の感情を抱くのではないだろうか。「カミングアウトできる」「勇気を出してカミングアウトした」という表現に既に現れているが、LGBTの人に対しては「今まで隠していた」と意識を持っていないだろうか。

また、そしてそれ故、多数派が、社会が、LGBTであることを「隠している」と当人たちに思わせている。この意識はLGBTでないマジョリティが植え付けたものと考えることもできるのだ。ストレートの人は「LGBTであるなら言うべきで、言わないのは良くないこと」という意識がないと言い切れるだろうか。筆者はストレートに分類されるのだが、言い切る自身はない。「カミングアウト」という言葉の使い方自体に、もう差別が潜んでいる。

 

「カミングアウト」という言葉を使わないようにしようなどと言っているのではない。意識が変わらなければ意味がないからだ。

カミングアウトなど、してもしなくてもよいのではないだろうか。そしてこのように思える社会が望ましいのではないか。広義のカミングアウトであれば、マイノリティでない人も日々行っている。何も特別なことではない。だから、LGBTの性的指向や性自認などのカミングアウトのみが特別視されるべきではない。

カミングアウトへの抵抗が弱まり、特に勇気を振り絞らなくてもカミングアウトできる社会、カミングアウトを受ける側もすんなりと受け入れられるような社会こそ目指す社会ではないだろうか。勿論、こういった社会は、現状から見るとまだまだ先の理想である。現状では、性的指向や性自認などをカミングアウトすることは勇気のいることである。(参考 LGBTが教える「カミングアウトされたときのナイスな対応」

しかし、一歩ずつ向かっていかなければならない。LGBTの旗であるRainbow Frag(レインボーフラッグ)。これが示すように、元々皆違う色、十人十色なのだから。

 

※ストレート:異性愛者;同性愛者でない。 元々同性愛者が使い始めた言葉で、彼らが彼ら以外の人をこう呼んだ。「異性愛者をストレートと呼ぶのは、同性愛者を『曲がっている』『歪んでいる』とすることになるから差別的」という議論がネット上などで度々起きている。「ストレート」という字面が物議を醸すのであろう。同性愛以外にも、トランスジェンダーと言った人がいることが明らかになってから、ストレートは「異性愛者」を指して使われる。

 

(写真の出典:http://gochamazetamago.main.jp/study/faq4/)

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