LGBT差別用語を素早く否定する人は、差別度が高い可能性がある

性的少数者(LGBT)への偏見度と、LGBTの差別用語を否定するスピードの速さは正比例の関係かもしれない。例えば、ホモという単語に対して、「使ってはいけない言葉」と回答する速度が早ければ早いほど、実はホモに対する偏見度(ネガティブ度)が強いかもしれないということなのだ。

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三重大学講師の栗田季佳氏の見解

障害者という単語を、より早く「悪い言葉」と答えた人ほど、実は障害者に対する差別・偏見度合いが高いーーー。偏見や差別の起因理由などを考えるシンポジウムに登壇していた、三重大学講師の栗田季佳(くりた・ときか)氏が自身の研究結果について、こう紹介した。

つまり、ネガティブなことに対して、素早く否定する人ほど、そのネガティブなことに対して、差別・偏見度が高いということだという。

筆者は、このシンポジウムの内容をまとめたマスメディアの記事(読売新聞朝刊 2015/12/6)を読み衝撃を受けた。

LGBTへの支援者(アライ)として活動をする人の中で、LGBTの差別用語(ホモなど)に対して、素早く強調的に「それは悪い言葉です」と、発言者を窘める人が数多くいるからだ。

また、筆者自身もなんとも言えない気持ちになった。筆者自身も、LGBTへのアライと言っておきながら、LGBTの差別用語に対して「それは悪いことです」と否定するスピードが早くないとは言い切れないからだ(筆者自身はスピードを計った経験はないし、ある人もいないと思うが)。

私たちは差別に対応する柔軟性がある


柔軟性を持ち、人の心をよく知ることで、差別や偏見がなくなるという

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差別心や差別心は無くならないのか。そんな、悶々とした状況のなか、栗田氏が示した3つの見解が興味深かった。それは、①差別・偏見の概念は、誰しもが持ちあわせていること、②私たちは差別に対応する柔軟性があるということ、③人の心の特徴を知ること、の3点を認識することで、差別や偏見がなくなるということだ。

特に①については、人間の生存戦略上の理由だとして、〈もともと私たちには、他者よりも自分を高く評価する傾向があります。生きる上で重要な心の機能ですが、障害者を劣った存在と見る認識にもつながります。こういう心の傾向は、生き残りをかけた生物進化の結果であり、昔も今もどんな人にもあるものです。〉(前掲)と、人間にとって致し方がない心理であると意見を述べた。

そこで、②・③のように、柔軟性を持ち、人の心をよく知ることで、差別や偏見がなくなるというのだった。

自身の差別・偏見性に対して自問していた筆者は、栗田氏の3つの見解を聞いて、少し安堵感が芽生えた。

しかし、この安堵感に安堵せずに、前述の3点を踏まえて、LGBTというテーマを研究していきたいと思う。

サム: LGBTのアライ(支援者)として、Flag編集部で記事執筆。前職において、様々な分野の企業・個人プロフェッショナルの広報業務(メディア露出)を支援。その経験を活かし、LGBTというテーマを、政治、経済、国際情勢、人文科学などの様々な切り口で考察、広報していきたいと考え、日々奮闘中。