LGBTへの差別的な発言をした神奈川県海老名市議員に対して、各所からの批難が噴出しているのは周知の事実。このようにLGBTというテーマにおいて、ネット上での発言が思わぬトラブルに発展する可能性がある。今回は、ネット界隈の権威「中川淳一郎」氏の見解を踏まえて、インターネット上での炎上時の対処策を紹介したい。
出典:photo-ac.com
海老名市議員のLGBTへの差別的発言
倫理観にかけているのは、ご自身ではないかーーー。神奈川県海老名市議員のLGBTへの差別的発言に対して、タレントの松尾貴史氏が批判を展開した。松尾氏のみならず多方面から、市議員への批判が相次いだのは周知の通りだ。この一連の騒動の中で、筆者が着目したのは市議員のネット上における対処の稚拙さだった。
例えば、市議員は自身のLGBTに関する発言について、〈不適切な表現であったことを深くお詫び申し上げます〉と投稿。それに対して、前述の松尾氏は〈表現の問題であるならば、適切な表現で書き直すべきではないか。つまりは、ちょっとした表現がいきすぎてごめん、という小さな問題にしてしまおうという魂胆が見える〉(毎日新聞 日曜くらぶ7面 2015/12/6)と、市議員が問題をすり替えようとしていることを指摘した。この後も、市議員のネット上での言い訳の量に比例するかのごとく、批判が増大した。
この事例から、ネットでの発言の巧拙が、批判に晒されるか否かの分水嶺となると考えても良いと思う。
では、ネット上での炎上については、どのように対処すれば良いのだろうか。この対処策を考えるうえで、書籍「ネットのバカ」(新潮新書)などネット関連の書籍を多数上梓する中川淳一郎氏の見解が参考になる。
東京オリンピックのロゴ盗用疑惑から学ぶ
世を賑わせた東京オリンピックのロゴ盗用疑惑において、ネット上での批判が止まらなかった理由について、中川氏は関係各所の対処に問題があったと指摘。特にテレビなどのマスメディアを通じて、強い言葉で全面否定した佐野研二郎氏(当該ロゴの製作者)に対しては、〈僕が佐野氏なら、すぐ現地に飛んで、コンセプトなどをベルギーのデザイナー、劇場に説明しました〉との見解を提示。さらに、〈まずライン(引用者注:会話アプリのline)をオフにして、人とリアルに真剣に向かい合うこと、「オンラインよりオフライン」がネットでトラブルが発生した時の鉄則です〉と言及した。
つまり、当事者間で顔を合わせて話をすることが重要であるというのだ。
この意見に、筆者は全面的に賛同する。筆者自身の経験でも、ネガティブなこと(双方の見解の相違など)が発生した際に、メールや文面でやり取りをすると、感情的になってしまったことがあるからだ。
ツイッターで、不用意な発言を繰り返した市議員には、中川氏の意見を参考にしてもらいたいものだ。それと同時に、LGBT当事者や支援者も、相手から批判や誹謗中傷が相次いだ場合は、SNSやメールでむやみやたらに反論をしないことが重要だと言える。もちろん、面識のない人と会って説明することは現実的ではないが、相手と直接会えないかぎりは、「(ネット上で)相手に反論するのは極力避ける」というのが基本原則だと思う。
筆者自身も、ネットやメール上に文章を載せるときには、最新の注意を払っていこうと身を引き締める思いだ。