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2015年10月29日の中野区役所においてLGBTシンポジウムが催された。 「すべての人々が暮らしやすい中野区をめざして」と題された会では 中野区長をはじめ教育長や弁護士、中野区にクリニックを構える医師などが参加した。

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01.LGBTの最も重大な問題は「孤立」

基調講演を行った弁護士の永野靖氏は「LGBTが直面する問題は様々なものがあるが、キーワードになるのは”孤立”」と語った。 「LGBTはマジョリティの家庭に生まれることがほとんどで、その点において他のマイノリティとは一線を画する」 LGBTは多数者(LGBTでない人たち)の家庭に生まれる。故に気づいた時からすでに「孤立」の中にいることになるわけだ。 永野氏によれば、10代で親へのカミングアウトをしているのは全体の15%しかいない。 過去にはカミングアウトをしたことで精神科に連れて行かれたケースもあるといい、カミングアウトの難しさを伝えた。

また「当事者はLGBTである自分を受け入れることもなかなかできない」と言う。 そもそも教育の現場でLGBTについて教える機会はない。 LGBTの存在を知らずに「自分はおかしい」という感情を抱えたまま思春期を迎えることになる。

自分がLGBTであるという「自己認識」。自分がLGBTと受け入れる「自己受容」。 これらができないとメンタルヘルスにも悪影響を及ぼすとされており、 日高庸晴教授や他の研究によれば「ゲイ・バイセクシャル男性の自殺未遂率は異性愛者の5.98倍」にも上る。

 

02.学校教育のあり方を見直す必要がある

中野区教育委員会教育長の田辺裕子氏は「人権課題にはトランスジェンダーのみが注目されてきたが、 〈性的指向〉の問題も徐々に課題として浸透させる必要がある」と語った。

LGBTは学校生活の中でいじめの対象になる場合も多い。 学校としても早急に対応策を考え、組織全体にも認知させていかなければいけない。 中野区に自身のクリニックを構え、学校医としても中野区に関わりがある山田医院の山田正興氏は 「学校にLGBTのパンフレットを置いたりして、相談できるような雰囲気を作るなどの対応ができるはず」とアイディアを出した。 実際に保健室にLGBT関連のNPOのパンフレットを置く学校も幾つかあるという。

 

03.「中野区はすべての人に優しい区を目指す」

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各分野の専門家が集まり中野区のLGBT政策について話し合われた。


中野区の田中大輔区長は 「(渋谷区や世田谷区のように)パートナー同士に対しての”証明証”の発行を検討しているわけではない」としながらも 「LGBTが不当に差別を受けていることは認識しており、解消しなければいけない重大な課題」とした。

また来年度から障害者差別解消法が施行されることにも触れ、 「すべての人に優しいユニバーサルデザイン(※)を用いた区を作っていく」と話した。 直近の政策として被害を受けている方が気軽に相談できる窓口を設けることなどを検討している。 区はLGBTの支援団体と協力しながらフレンドリーなまちづくりをしていく予定。 (※)ユニバーサルデザインとは年齢や性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、全ての人が使いやすく仕組みをあらかじめ設計すること。

04.オランダは同性婚先進国

レズビアンやバイセクシャルの女性を支援している団体LOUDの代表大江千束氏は 「多様性を尊重する社会はみんなにとって生きやすい」と述べ、 同性婚先進国のオランダの例を話しながら違和感なく過ごせる街にしていきたいとした。

オランダでは2000年に同性婚が法律化されてから早15年が経つ。 オランダの若者世代では同性婚は「できて当たり前」で「常識」である。 すでに15年経っていることもあり同性婚がなかった時代を知らない世代も出てきた。 「同性婚ができない時代があったんだね」と話す若者もいるとのことだ。

大江氏は(オランダではすでに)「結婚するって男と?女と?」という会話が普通にされる社会になっていると話す。

 

05.まとめ

電通ダイバーシティ・ラボの調査によるとLGBTの割合は人口の5%ほど。 中野区の人口はおよそ30万人であるから、LGBT人口はおよそ1万5千人である。 早期のLGBT教育が大切であるとシンポジウムで語られていたが、 生徒だけではなく教師側、住民だけでなく役所側にもLGBTが存在することも忘れてはいけない。 大江氏の話すオランダような先進的な社会にいつか日本もなるであろう。 今後の中野区のLGBT施策を応援していきたい。

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