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5月16日、経団連(日本経済団体連合会)が経済界では初めてLGBTの対応に焦点を当てた「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」の声明を発表した。

経団連では以前から高齢者雇用や外国人人材の受け入れ、女性の活躍推進など、ダイバーシティーへの取り組みがされてきたが、LGBTに焦点を当てたものは今回が初めてである。

声明の中では、見えないマイノリティであるLGBTを「身近な存在」として周囲が理解すると共に、多様な存在として社会が認識・需要し得る社会の構築が必要であると主張した。

具体的な提言内容は以下の通りだ。

 

①性的指向・性的自認等に基づくハラスメントや差別の禁止を、社内規定等に具体的に明記。

②社内の人事・福利厚生制度の改定

③社内セミナー等の開催

④社内相談窓口の設置

⑤ハード面での職場環境の整備

⑥採用活動におけるLGBTへの配慮

⑦LGBTに配慮した商品・サービスの開発

⑧社外イベントへの協力、NPO法人等との連携

 

適切な理解・知識を共有し、LGBTの社員や顧客に対する差別を禁止することや見えないマイノリティであるLGBTの存在を認識し、その存在を前提とした環境や制度を構築することを求めた。

日系企業の中でLGBT支援のノウハウを持っている企業は少なく、個人としてもLGBTの知識を持っている人は少ないのではないだろうか。社内にてLGBT研修を行うなど、正しい知識の共有や理解をするところから始めることはLGBT支援を始める一歩として有効であると考えられる。

 

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また、本声明では(この取り組みは)優秀な人材の確保やブランド価値の向上などの企業が受ける恩恵についても指摘がされている。

実際にアメリカでは人権団体の発表するLGBTフレンドリーな企業ランキングが業績を左右する状況にもなっているとのことだ。

 

アメリカの人権団体ヒューマン・ライツ・キ ャンペーン(HRC)は、
2002 年より”Corporate Equality Index”(企業平 等指数)を公表し、
全米の企業各社がLGBT等特定の従業員を排除せず平等 に受容しているかの評価を行っている。

また、同団体が発行する”Buyer’s Guide”では、LGBTフレンドリーな企業がランキング形式で紹介されてい る。
こうした指標は、消費者が購買行動を決定する際や、人材が企業を選択す る際の一つの参考指標とされているため、
企業としてはこれらを必然的に意識 することとなる。

 

 

海外においてはCMにLGBTの方が登場するなど、LGBTフレンドリーであることを示すプロモーションが積極的に行われているが、日本においてはLGBTフレンドリーを表すプロモーションはあまり行われてこなかった。しかし、現在企業がグローバルに展開する中でこのLGBTの支援による恩恵は見過ごせないもになっているのではないだろうか。

今回、経団連が行った調査でも企業のLGBT支援に対する注目度の高さが証明されている。

「企業による取り組みは必要だと思うか」という質問では91.4%が「思う」と回答し、企業のLGBTへの取り組み対する関心の高さが伺えた。

さらに、「なんらかの取り組みを実施しているか」という質問に対しては、全体の42.1パーセントが既に実施中、34.3%が検討中と回答した。

今回の調査は大手企業を中心にしたものではあったが、それを踏まえても日本企業のLGBTへの関心は高まっていると言えるだろう。

 

経団連グラフ

今後、LGBTへの支援を検討している企業はどのように進めていけばよいのだろうか?

経団連では、NPO法人等との意見交換や協働を推奨している。

 

企業がLGBTに関する取り組みを進める上で は、LGBTへの理解を促進し、差別を禁止すること、
また、当事者のカミン グアウトの有無にかかわらず、多様な人材の存在を前提とした環境・制度の整 11 備を進めることが求められる。

その際、LGBTに関わる様々なNPO法人等 との意見交換や協働を図ることは有用である

 

外資系企業では、多くの場合でLGBT当事者による労働組合が存在しているが、日系企業ではLGBTの労働組合が存在する企業は少なくLGBT当事者の声を聞く機会が極めて少ない状況だ。

NPO法人との提携は貴重な当事者の声を聞く機会にもなり、LGBT当事者の方のニーズに沿った支援にも繋がると考えられる。

また、この提携はNPO法人側にもメリットがある。

提携により企業単位でLGBT支援を行うことは社会に対してより大きなインパクトを与えることにつながり、認知度の向上や正しい理解の促進が期待することができる。

LGBT支援をする上でのNPO法人との提携はベストの選択と言えるだろう。

握手

 

経団連は一部上場企業を中心とした1350社(2017年4月1日現在)が加盟しており、その発言は労使間交渉に大きな影響を与えている。

今後も経団連では”work with Pride”への協力など、「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けてLGBTの問題へ取り組む姿勢を示しており、企業におけるダイバーシティの取り組みの更なる加速が期待される。

 

ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けては、持続的な取り 組みが求められる。
今後、経団連としても、”work with Pride”への協力等、 LGBTの人々に関する対応をはじめ、
女性の活躍推進、働き方改革、高度 外国人材の受け入れ、バリアフリー社会の実現等に組織をあげて取り組んで いく。

 

※写真はJ-CAST、ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて(PDF)、一般社団法人日本経済団体連合会サイトより

引用

日本経済団体連合会、ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて(PDF)http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/039_gaiyo.pdf

日本経済団体連合会、ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて(本文)http://www.keidanren.or.jp/policy/2017/039_honbun.pdf

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