佐藤かよ氏 「男か女かは関係ない。君にしかできないことがある」

モデルとしてテレビや雑誌で広く活躍する、佐藤かよさんのインタビュー記事(朝日新聞)を紹介したい。佐藤かよさんは男性として生まれたが、女性として生きることを望み、過去に辛い日々を送ってきたという。物心がついた時から、性別に違和感を感じていた。学ランを着ることが嫌で登校拒否になり、家出をした過去もある。そんな佐藤かよさんは朝日新聞の記者に対して以下のように語る。

(家出をしている時に女友達と服や化粧品を見に行ったりして)「素の自分でいられる居心地のよさ。男の子の生活には戻れないと分かりました。」(朝日新聞2016/02/08)


佐藤かよさん(画像は自身のブログから)

その後、佐藤かよさんの母は捜索願を出し、最悪の事態も考え、家出している「息子」を探した。とうとう本人が見つかった時、佐藤さんは茶髪に派手なメイクをしていたという。母は怒らず、「好きな服を着ていい。二度といなくならないで」と佐藤さんに言った。(前掲)

そして母はどうしたら女性として生活できるか考え、佐藤さんを女性ホルモンの治療説明会に誘った。

(佐藤さんは)「元には戻れなくなるけど、後悔しない?」と心配する母に「男性として大人になるくらいなら、苦労が増えても女性として生きたい」と言い切った。

だらだらした生活から一転、アルバイトに励んだ。朝が早くても、休みがなくても、自分を押し殺していた学生生活より楽しかった。(前掲)

 

その後、佐藤さんは身体の性は男性であることを隠し、読者モデルの仕事を始めた。徐々にテレビや雑誌、広告の仕事は増えていった。しかし同時に「昔、男性だった」という疑惑をかけられてしまう。カミングアウトすれば嘘つき呼ばわりされるだろうし、仕事もなくなってしまうかもしれない。しかし、隠し続ける生活も辛く、いつまでも続けられる自信もない。佐藤さんはカミングアウトするかしないかで揺れた。「男性だった」過去に足を引っ張られる悔しさがあったという。そんな時、佐藤さんを支えていた母はこう語った。

「本当のことを伝えて離れていく人とは、そこまでの関係。それでも仲間だと思ってくれる人を大事にするの」(前掲)

その後、佐藤さんはカミングアウト。本当のことを伝えると、モデル事務所の社長は驚きながらも「男か女かは関係ない。君にしかできないことがある」(前掲)と励ましたそうだ。

今や芸能界で大きく活躍されている佐藤かよさんだが、それまでの道のりは、やはり大変に辛いことの連続であった。挫折してしまいそうなときに支えてくれる人がいる大切さは、ここから大いに学ぶことができる。そして佐藤さんの勇気である。カミングアウトすることと、このまま隠し続けることとの間で揺れている時、勇気を起こせたのは「自分自身が何をしたいか」を常に忘れずに抱いていたからだと思う。それを抱いていたからこそ前に進むことができたはずだ。

多くの人が「自分の弱いところ」ばかりに焦点を当て、うろたえている。しかし、それではいけない。大切なのは「自分が行きたいところ」に焦点をあてること。何かを成し遂げるためには、夢や目標を常に自分の中に持ち、挑戦することが必要だ。

 

one: LGBTの当事者としてFlag編集部に携わる。LGBTの人生・キャリアに関連した記事を中心に執筆。ご意見・ご連絡はこちらまで:info@rainbowflag.jp