2026年2月6日、世界中の注目を集めるなか開幕したミラノ・コルティナオリンピック。日本でも連日、選手たちの活躍が生中継やニュースで報じられ、大会への関心は日に日に高まっています。
その一方で、今大会ではトランスジェンダーであることを公表した選手が出場したことも伝えられ、競技以外の側面でも注目を集めました。
※2026年2月時点での情報です。
トランスジェンダー選手として出場した選手
ミラノ・コルティナオリンピックでトランスジェンダー選手として出場したのは、フリースタイルスキー選手エリス・ルンドホルム(23歳)です。スウェーデン代表であるルンドホルム選手は、フリースタイルスキー種目のうちモーグルに出場し、2月12日(日本時間)に行われた女子モーグル予選では25位を記録しました。
ルンドホルム選手は、出生時に割り当てられた性別は女性ですが、自身の性自認は男性であると公表しています。こうして公の場に自身のセクシュアリティを公表している選手が冬季オリンピックに出場するのは史上初だといいます。
トランスジェンダー選手とオリンピック出場ルール
冬季オリンピックでは史上初ですが、夏季オリンピックでは過去にもトランスジェンダー選手が出場しています。
2021年に開催された2020東京オリンピックでは、ニュージーランドのウエイトリフティング選手でトランスジェンダー女性(出生時の性別は男性)であるローレル・ハバード選手が出場しました。ハバード選手は、重量挙げ女子87キログラム超級に出場し、出生時の性別とは異なるカテゴリーで競技する初のアスリートとして広く報道されました。
2013年に性別適合手術を受けるまでは男子部門で競技しており、当時、肯定的な意見の一方で「体格差があるため他の選手が不利になるのでは」と否定的な意見も散見され、話題となりました。
同じ東京大会では、カナダ女子サッカー代表として出場したレベッカ・クイン選手がトランスジェンダー/ノンバイナリーであることを公表しています。
クイン選手は東京大会で金メダルを獲得し、公にトランスジェンダーであることを明らかにした選手として初の五輪メダリストとなりました。この事例は、大会側が特別な枠組みを設けたものではありませんが、五輪における参加基準やジェンダーをめぐる議論を考える上で象徴的な出来事といえます。
トランスジェンダー選手の出場基準について、国際オリンピック委員会(IOC)は2021年に発表した指針『公平で、包摂的、そして性自認や性の多様性に基づく差別のない IOC の枠組み』において基本的な考え方を示しています。この指針自体は、個別の競技ルールを定めるものではなく、各国際競技連盟(IF)がそれぞれの競技特性に応じて独自のルールを策定するための「共通のガイドライン」として機能しています。そのため、具体的な出場資格や医学的な基準については、各競技の専門的な視点から個別に判断される仕組みとなっています。
▶ 日本オリンピック協会発表の指針
https://www.joc.or.jp/olympism/document/pdf/framework2203_jp.pdf
今回、ルンドホルム選手が出場したのは「女子」モーグル種目です。出生時の性別は女性で、自身の性自認は男性であることを公表していますが、大会では女子カテゴリーでエントリーし、他の選手と同じ条件で競技に臨みました。
現在、トランスジェンダー選手の出場に関する規定は、様々な観点から継続的に見直されています。IOCは、「女子カテゴリーを守る」ことを重視しているとし、2028年ロサンゼルス大会に向けてルールの再検討が行われる可能性も示唆されています。今後の方針次第では、出場条件がさらに変更される可能性もあり、国際的な議論が続いています。
こうした議論や制度の見直しが進むなかで、ルンドホルム選手は自身の立場について、性別に関する話題や「冬季種目初のトランスジェンダー選手」という位置づけについては、深く考えたことはないとし、「私は他の選手と同じ条件でこの場に立っている。ただスキーを滑っているだけだ」と素直な胸の内を明かしました。
さらに、現在導入が検討されているという遺伝子検査の義務化については「誰もが公平に競技できることを望んでいる」とコメントしています。
おわりに
連日テレビやニュースで報じられているミラノ・コルティナオリンピック。そこには勝利を賭けた熱い戦いだけでなく、多様な背景を持つ選手たちの姿があります。
ルンドホルム選手のようにトランスジェンダーであることを公表して出場する選手がいる一方で、同性のパートナーとともに今回の大会に出場する選手や、ライバルとして競い合う選手もいます。
オリンピックは国や地域を代表する競技大会であると同時に、さまざまな立場や背景を持つアスリートが集う場でもあります。そうした事実に目を向けることは、競技の結果とは別の角度から、大会の意義や趣旨をあらためて考えるきっかけにもなるかもしれません。






