同性婚訴訟、東京高裁で全国初の「合憲」判断|LGBTニュースならFlag(フラッグ)

同性同士の婚姻が認められていない民法および戸籍法の規定について、憲法に違反するかどうかが争われている裁判で、東京高等裁判所は2025年11月28日に「合憲」とする判決を下しました。

これまで、全国6カ所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)、計6件行われた同様の裁判において、現行法が「合憲」であるという判断が下されたのは、今回が初めてです。

※2025年12月時点での情報です。

今回、東京高裁では何が争われたのか?

今回の裁判は、「結婚の自由をすべての人に」訴訟のうち、東京第二次訴訟の控訴審にあたります。

この訴訟では、原告であるトランスジェンダー男性を含む性的少数者(性的指向や性自認が多様な人々)8人が、同性カップルに結婚を認めていない民法と戸籍法の規定が憲法に違反するとして、国に対してひとりあたり100万円の損害賠償を求めています。裁判での主な争点としては、「法の下の平等」、「婚姻の自由」、「個人の尊厳と両性の本質的平等」に違反するかどうか、という三点でした。

一審の東京地裁が、「違憲状態である」と判断していたのに対し、今回、東京高裁の東亜由美裁判長は、「合憲である」という判断を下しました。そして、原告側の控訴を棄却するとともに、国への損害賠償請求も退ける形をとりました。

まず、「法の下の平等」に関して、現在施行されている民法および戸籍法の規定が、同性カップルを法律婚の対象から除外している点について、東裁判長は、婚姻制度が「夫婦とその子ども」を基本的な家族の形であると想定していることを指摘しています。

また、男女による子の生殖(子どもを産み育てること)が今なお通常の方法であることから、「夫婦を法律上の男性と女性と解釈することは合理性がある」と判断されました。こうした理由から、現行の規定による区別は「法の下の平等」に違反しないという結論に至っています。

そして、「婚姻の自由」を定めた憲法24条1項について、東裁判長は、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」という文言に着目し、婚姻は、「異性同士が結びつく関係」を指していると解釈しました。これにより、今回の判決では、この項目が同性婚を保障しているとは言えないという見解が示されています。

さらに、判決では、同性婚に関する審議が国会で進まない状況が続けば、誰もが幸せを追及できる権利について明記されている「幸福追及権」などとも関連づけて「違憲は避けられない」という指摘も見られました。しかし現時点では、憲法が求める個人の尊厳を大切にした婚姻制度と照らし合わせても、今の制度がすぐに不合理だとは言えないと判断されました。

また、制度をどう整えるかは国会が決めるべきことで、その権限を越えているともいえないとして、国に賠償責任はないと結論づけています。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟の全国の状況

前述したとおり、今回の訴訟は「結婚の自由をすべての人に」訴訟のうち、東京第二次訴訟の控訴審にあたり、この一連の訴訟は2019年から全国へと大きな広がりを見せてきました。

全国6か所で提訴された、「結婚の自由をすべての人に」訴訟。東京の第一次訴訟は2019年2月14日に行われましたが、同年同日には、東京のみならず、札幌、名古屋、大阪それぞれの地裁で一斉に提訴する動きがありました。 こうした動きを皮切りに、その後、福岡でも提訴され、今回の東京の第二次提訴が最後となり、計6件となりました。 この6件の訴訟は、今回の判決をもってすべてが高裁での判断を終えたことになります。

東京の第二次提訴より前に行われた5件の裁判では、いずれも「違憲」もしくは「違憲状態」であるという判断を下していました。そのため、今回の東京高裁(第二次訴訟)の「合憲」という判断は、全国で初めての結論となり、司法の判断が分かれる結果となりました。 この結果は、同性婚の是非を巡る議論が、依然として司法の中でも見解が割れていることを示しています。

報道によると、今回の裁判が閉廷し原告たちが高裁前で判決内容を伝えると、支援者らからは驚きや憤りの声が上がったといいます。
また、今回の判決を受け、弁護団は「婚姻の自由と平等の実現は、もはや揺るがない社会の情勢であり、判決はこれに逆行する」との声明を発表し、今後の戦いに臨む決意を表明しています。

「公益社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」公式サイト

最高裁での最終決着へ

東京高裁での判決を受け、原告側は本判決を不服として、最高裁判所に上告する方針を明らかにしました。これにより、同性婚を認めない現行法の規定が憲法に違反するか否かについて、今後は最高裁判所が最終的な判断を示すことになります。

誰もが、自らの手で自らの幸せを追及できないこの状況は、脱却が急がれる大きな課題です。この課題は、司法の判断を待つだけでなく、社会全体で向き合うべき問題とも言えるでしょう。私たちが、私たちの選択で幸せを選び取れる、すべての人々が当たり前の幸せを当たり前に、平等に与えられるために、法というものが存在しているのではないでしょうか。

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