近年、人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」(以下、ドラクエ)の性別に関する論争が再び注目を集めている。
この論争は、特にLGBTQコミュニティにおいて大きな関心を呼んでいる。
ドラクエ性別選択システム、LGBTQコミュニティの声
近年、LGBTQアクティビズムとともに、「性自認」という言葉も広く知られるようになり、自身自認する性別を、「男性」「女性」の二元化された枠に当てはめず、個人の感じ方で選択できる社会へ進化してきた。
性別の数については、文化や社会、国、個人の認識によって異なるため一概には言えないが、現代のジェンダー理論やLGBTQコミュニティの視点から見ると、性別は「男女」の二つに限らず多様で流動的だ。
以下は一部の例として挙げる。
- シスジェンダー:男性、女性共に、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致する性
- トランスジェンダー:出生時に割り当てられた性別と異なる性
- ノンバイナリー:二元的な性別に当てはまらない性
- クィア:性別に対する固定概念にとらわれない性
- アジェンダ―:性別を持たない、または性別の概念を感じない性
- ビッグジェンダー:複数のジェンダーを持つ人
これらはほんの一例であり、性自認は個々人により異なるため、固定的な数として定義するのは難しい。
これらを踏まえ、本題であるドラクエ性別論争では、プレイヤーがキャラクターの「男性」か「女性」かの性別を選ぶことができるシステムにおいて、性別選択がジェンダーの多様性を十分に反映しているかどうかが議論の的となった。
2024年11月に待望の「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」(スクウェア・エニックス)のリメイク版が発売された。
そこで発売前から繰り広げられていた話題がある。
このリメイク版では、性別に変えて、「ルックスA」「ルックスB」という表記を導入したことだ。
一見、「男性」「女性」の表記を廃止し、ジェンダーの多様性に配慮しているように見えるが、実際はどうだろうか。
性別(ジェンダー)選択の自由と限界
実際は、「ルックスA」「ルックスB」と分けられているとはいえ、「ルックスA」は元来の「男性」の見た目に対する置き換え、「ルックスB」は女性の置き換えになっているのは明確だ。
LGBTQ(ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア等性的マイノリティの代表的な総称)の間では、「 これでは表記を置き換えただけで、意味がないのでは?」 「もっと多様な性別表現を取り入れるべきだ」 という声が上がった。
一方で、ドラクエの開発者たちの声はどうだろうか。
ゲーム制作においては、ゲームの世界観やストーリーラインに基づいてキャラクター設定を行うことに加え、全世界への展開を主流として開発を行っているため、最も規制が厳しい国に合わせて作らなくてはならない。
その上で、ドラクエの”生みの親”である堀井雄二氏は、「男女にしていったい誰が文句を言うんだろう。分からない」とインタビューに答えた。
まとめ
LGBTQコミュニティの声や社会の流れもある一方で、ゲーム制作者側にも様々な規制やコンプライアンスがあり、全てのプレイヤーのニーズに応えることは難しい現状は依然と存在する。
このドラクエ性別廃止論争は、単なるゲームの話題にとどまらず、社会全体のジェンダー意識の変化を映し出すものと言える。
ノンバイナリーのキャラクターや、男性同士、女性同士の同性間の恋愛関係をもっと自由に表現できるようにするなど、工夫を凝らすことで、ゲームがより多くのプレイヤーにとって共感できるものになり、より多くの人に愛される作品が生まれることが期待できるのではないだろうか。