トヨタ自動車はLGBTQイベントのスポンサーシップを停止すると発表した。
反DEI(※)活動家への批判を受け、「政治的な議論であること」を理由にDEIプログラムの取り組みに対し見合わせるとした。
※DEI: ダイバーシティー(多様性)、エクイティー(公平性)、インクルージョン(包括性)への取り組み
反LGBTQ/DEI運動の標的になる大企業
DEIに反対する活動家とは、 ロビー・スターバック氏(以下、スターバック氏)のことだ。
彼はアメリカの保守派の政治活動家であり、ミュージック・ビデオ監督、ポッドキャスト等でも活動するインフルエンサーである。
2024年6月初旬、スターバック氏は自身のTikTok動画で「暴露|TOYOTAを”意識高い系”にした」というタイトルで、トヨタ自動車の「LGBTQに対する行き過ぎたサポート」「メインの顧客のことを忘れていないか?」と批判。
さらには、この“行き過ぎたサポート”を理由に、SNSを中心にトヨタに対する不買運動の呼びかけを始めた。
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この批判の1週間後、トヨタ自動車は、アメリカの従業員5万人とディーラー1500社宛に、米LGBTQ団体ヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)による企業文化調査への参加も停止すると発表。
トヨタ自動車は、該当するLGBTQプログラムは従業員グループ(ERG)が主導したものであり、会社は直接関与していないとしていた。
スターバック氏はここ数カ月にわたり、「ウォーク(WOKE=社会問題などに対する意識が高いこと)」方針を掲げる企業としてトヨタを含む数社を批判してきた。
二輪車メーカーのハーレーダビッドソンやフォード・モーターも同様に、LGBTQグループ対象プログラムの縮小など、DEIへの取り組みを抑制する方針を示した。
新トランプ政権により、加速する反LGBTQ/DEI運動
現在、アメリカにおいて、バックラッシュ(社会学用語で、主に人権問題を含む政治的又は思想的反発、反動、揺り戻し)の動きが止まることなく加速している。
さらには、新トランプ政権になり、LGBTQ+にとどまらず、今回のようにDEIにまで標的の範囲が広がり、日本企業にも影響が出始めている。
特にGoogleなどグローバル企業では「ERG」という、人種やLGBTQ の当事者、アライの従業員で構成された有志のグループがある。
この「ERG」という言葉でさえ使用を抑制される現場もあるようだ。
しかし、どの国においてもマイノリティの人権問題が解決されるべきことには変わりなく、このバックラッシュ・反動を乗り越え、企業の経営陣が社会的責任を果たす責任がある。
多様性をめぐる問題。日本では?
今回トヨタ自動車の問題を取り上げたが、日本においては、DEI推進やLGBTQ+やジェンダーに関する問題に対する動きはアメリカに比べ少々遅れている。
アメリカのバックラッシュに巻き込まれることなく、LGBTQをサポートしてきた中小企業を含む多くの団体がここまで少しずつ歩みを進めてきたものを失くしてしまうことのないよう、「すべての人権が守られる日本社会」目指すべきである。
そのためにも、トランプ氏を支持するイーロン・マスクが買収した「X(旧Twitter)」があるが、こうした米国における反動の動きも加味し、「本当に正しい情報」を得られるプラットフォームの利用が求められる。