2月1日、岸田文雄首相は衆院予算委員会で、同性婚の法制化について「極めて慎重に検討すべき課題だ」と述べ、改めて否定的な考えを示した。
同性カップルの結婚の自由を認めようとしない理由については、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べた。
岸田首相が述べる家族観や価値観は、男女の婚姻に関する固定観念を指している。
結婚の自由を願うゲイやレズビアンなどのセクシャルマイノリティの同性婚を認めれば、これまでの家族観や価値観を持つ層の反発を招きかねないとの認識が透けてみえる。
今回の答弁はセクシャルマイノリティの基本的人権を軽んじる内容とも受け取れ、質問した立憲民主党の西村智奈美代表代行は「実現を待っている方々の声を過小評価しないでいただきたい」と批判した。
首相は「制度改正すると、日本国民全てが大きな関わりを持つことになる」との認識を表明し、「社会全体の雰囲気や全体のありようにしっかり思いを巡らせ、判断することが大事だ」と述べ、引き続き静観する意向を示した。
2019年5月、台湾にてアジアの国・地域で初めて法的に同性婚を公認している。
また、日本では、2019年2月、同性婚を認めない民法や戸籍法の規定は憲法に反するとして、国会が同性婚を認める立法を怠り精神的苦痛を受けたとして、3組の同性カップルは精神的苦痛に対して損害賠償を国に求めた。
2021年3月、札幌地裁では同性婚を認めていない法規定を「憲法違反」と初判断し、同年6月、大阪地裁では「合憲」と判決が下された。
続いて、同年11月、3例目判決となる東京地裁では「違憲状態」と判決が言い渡され、セクシャルマイノリティ当事者や支援者間では、政治の役割に期待の声が広がっていただけに今回の答弁は非常に残念といえる。
これまで、時代の移り変わりと共に、価値観や法制は変化してきた。
一例であるが、女子差別撤廃に向け、1985年「男女雇用機会均等法」が制定された。
今では女性が働く機会も環境も整いつつあるとともに、社会全体の価値観は変化してきている。
法制化により社会は変化するのは大前提であり、必要とする人がいるのであれば法制化の実現に向けて国が動くのは当然であろう。
世界で徐々に実現されていることが、日本だけできない理由はどこにあるのだろうか。
日本が世界から取り残され、笑られる未来を想像したくはない。