ゲイカップルと選択的夫婦別姓制度

現在、日本は法律上、同性婚は認められていない。
法律上結婚ができないゲイカップルと、結婚に際する議題として挙げられている選択的夫婦別姓制度は、一見無関係のように見える。
しかし、ゲイカップルと選択的夫婦別姓は無関係とは決して言えない。

選択制夫婦別姓制度とは

選択的夫婦別姓制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の姓を称することを認める制度。
現在の民法のもとでは、結婚に際し、夫婦がそれぞれ結婚前の姓を称することを認められておらず、男性又は女性のいずれか一方が、必ず姓を改めなければならない。

民法
第4編 親族
第2章 婚姻
第2節 婚姻の効力
第750条(夫婦の氏)

第一 婚姻の成立
一 婚姻適齢
婚姻は、満十八歳にならなければ、これをすることができないものとする。
二 再婚禁止期間
1 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができないものとする。
2 女が前婚の解消又は取消しの日以後に出産したときは、その出産の日から、1を適用しないものとする。
第二 婚姻の取消し
一 再婚禁止期間違反の婚姻の取消し
第一、二に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に懐胎したときは、その取消しを請求することができないものとする。
第三 夫婦の氏
一 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
二 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

厚生労働省の「平成28年度人口動態統計特殊報告『婚姻に関する統計』の概況」によると、平成27年における「婚姻後の夫妻の氏別にみた婚姻」は、改姓をする96%が女性となっている。
このように、現実には、男性の姓を選び、女性が姓を改めるカップルが圧倒的多数である。

改姓による仕事や日常生活上に不便・不利益、またアイデンティティの喪失など、様々な不便・不利益の指摘が浮上してきたことを背景に、選択的夫婦別姓制度の導入を求める声が増加している。

●改姓時に手続きが必要なものの一覧
運転免許証/マイナンバーカード/銀行口座/印鑑登録/パスポート/健康保険証/年金/クレジットカード/携帯電話/自動車登録/各種保険など

上記一覧から、改姓に伴う手続きの数や時間にかかる労力は想像できる。

別姓の選択は、改姓手続きの労力削減だけではなく、キャリア形成の保持にもメリットがある。
姓の保持は、仕事上これまで築いてきた社内外の人に、姓が変わることにより個人を認識してもらえなくなる不利益を避けることができる。
特に、フリーランスなど個人で仕事を行っている人にとっては、自分の名前が屋号となっているため、名前の変更により個人が認識されなくなることは大きな損失となる可能性があるが、別姓の選択により防ぐことができる。

さらに、別姓の選択は、本人が望まない場合の改姓に伴う婚姻や離婚の事実を周囲に知られる可能性や、アイデンティティの喪失の可能性も防ぐことができる。

選択的夫婦別姓制度の導入により、一人一人の生き方に合わせた柔軟な意思選択が可能となるが、婚姻制度や家族の在り方に関係するため、慎重な議論が必要とされている。

ゲイカップルと選択的夫婦別姓の関係

前述したとおり、日本は法律上、同性婚は認められていない。
法的に結婚が認められていないゲイカップルは、結婚に際する選択的夫婦別姓制度は関係ないと考える人は多い。

しかし、ゲイカップルと選択的夫婦別姓は無関係とは言えない。

法的に結婚ができないゲイカップルにとって、結婚やその先を考えることが出来ないと感じることは想像できる。
しかし、同性婚の導入を目指すなか、実際に同性婚が実現すれば、選択的夫婦(夫夫・婦婦)別姓制度の未導入による不便・不利益などは自分たちの身に降りかかる。
よって、選択的夫婦別姓制度は、同性婚の法制化と同時並行で押し進める必要がある。

同性婚と選択的夫婦別姓が抱える共通点

同性婚と選択的夫婦別姓は同じ壁に直面している。

先月、大阪地裁にて同性婚を認めぬ規定に対し「合憲」と判決が下された。
大阪地裁は、憲法24条が婚姻を「両性の合意」に基づいて成立すると定めていることより「同性間の婚姻は含まない」と指摘し、日本の婚姻制度は男女が共同生活を送り、子孫を残すことを法的に保護する目的のためと判決について述べている。
結婚は男女間で行うという前提のもと、子孫を残す伝統を守ることが一般的であるという主張である。

選択的夫婦別姓の導入については、夫婦が別姓を名乗ることにより家族の絆の喪失および伝統の崩壊など、家族制度の破綻を懸念した声が挙げられている。

家族制度や伝統の保護が論点の一つとなっている点が、同性婚および選択的夫婦別姓制度の実現に向けて直面している壁である。

同性婚の実現によりゲイカップルの結婚が可能となり、選択的夫婦別姓制度の実現により双方が望む場合の別姓での生活が可能となる。
制度や伝統の保護も必要であるが、個人が自分らしく生きるための選択肢が増えることは多様性の実現に繋がると言える。

ゲイカップルが婚姻と姓の選択ができる社会が1日も早く実現することを願う。


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