南部・高雄市でこのほど、婚姻関係にある男性同士のカップルに養子縁組を認める司法判断が下された。同性婚カップルの双方に血縁関係のない養子縁組が認められたのは台湾で初めて。
台湾では2019年、同性婚を容認する法律がアジアで初めて施行された。だが現行の法律では、一方の実子を養子とする養子縁組しか認めていない。
喵喵さんは、配偶者の圍圍さん(いずれも仮名)が結婚前に養子にした女児を、「もう1人の父親」として養子に迎え入れるための手続きを裁判所に申し立てていた。2人は4日、裁判所から申し立てが認められたことをフェイスブックページで明らかにした。
2人が公開した判決文によれば、「子どもの最善の利益」が考慮された。同性婚容認の特別法では養子縁組を禁じてはいないことにも言及された。
同性婚の理解促進を図る民間団体「彩虹平権大平台」は、今回の判決はあくまで当事者である2人にしか適用されないと指摘。養子縁組を望むカップルが他にもいるとし、法改正などに向け今後も支援を続けていく姿勢を示した。
台湾での同性婚実現までの道のり
2019年5月24日、台湾で同性婚が認められるようになりました。アジア初の快挙となったこのすばらしいニュースは、日本でも大きく取り上げられたので、ご存じの方も多いかもしれません。
あれから約1年後の2020年5月23日までに、台湾で4,000組以上の同性カップルが結婚しました。台湾での同性婚の成立までの経緯、そして、アジアで初めて同性婚を実現した台湾が、結婚の平等を叶えるために何があったのか、まとめたい。。
アジア初の同性婚を実現した台湾だが、もともと同性愛に寛容だったわけではなかった。「同性婚は、家族を破壊する」という考えをもつ人が、数多くいたのだ。台湾のLGBTIの人たち、そして活動家たちは、そのような偏見や差別と闘いながら、20年以上にもわたり、同性婚の実現を訴え続けてきた。特に2020年代に入ってからは、同性婚を求める声が高まっていった。
同性婚を求める多くの人たちの声が届き、2017年5月、台湾の最高裁判所は、同性カップルに結婚の権利が認められないのは違憲であるとの判断を下し、2年以内の法改正を求めた。合法化への道を開く、歴史的な出来事である。
同性婚実現の背景
2017年、同性婚に関する憲法解釈が行われ、同年5月に
「同性カップルに婚姻の権利を認めない現行の法制度は違憲状態」
との発表がなされていた。
違憲判決の後、台湾の最高立法機関である立法院では、異性カップルの婚姻に適用されている「民法」を改正することで、婚姻平權(婚姻平等の権利)の実現が目指されていた。
だが、2018年11月に行われた国民投票で、状況は一変。
「同性カップルの婚姻は、民法改正以外の別の方式で認められるべき」
との結果が導き出されることとなったのだ。
民法改正以外の方法で、同性カップルにも婚姻の権利を認めるには、どうすれば良いのか。
その答えとして、国民投票の後に、台湾の最高行政機関・行政院より提案されたのが「司法院釋字第748號解釋施行法」という法案である。
実は、この法案の名称についても、発表前には、
「同性カップルに婚姻を認めるものなのだから、“同性婚姻法”とするべき。」
「いや、婚姻と明記すべきでなく、“同性共同生活法”のような名称に留めるべきだ。」
と、同性婚賛成派と反対派の間で大きな議論が巻き起こっていたのだ。
最終的には、双方の対立を和らげるために、2017年の違憲判決(司法院釋字第748號)の名称を盛り込むことになり、2019年5月17日の最終審議でも可決された「司法院釋字第748號解釋施行法」という名称に落ち着く理由となった。
しかし、この出来事によって、法案の名称については討論がひと段落したものの、その内容については依然として不服を訴える反対派。
行政院の提案した法案に対抗して、「公投第12案施行法」と「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」という2つの法案が提出された。
では、
①「司法院釋字第748號解釋施行法」
②「公投第12案施行法」
③「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」
この3つの法案は、一体どんな部分が異なるのか。
①「司法院釋字第748號解釋施行法」
・制度適用は18歳以上、未成年(20歳未満)は法定代理人の同意が必要
・同性カップルに「婚姻」関係を認める
・「血縁関係にある子供」を2人の養子にできる
・夫婦財産制、遺産相続の権利を認める
・2人双方の同意のもとに離婚できる
②「公投第12案施行法」
・制度適用は20歳以上
・同性カップルに「家屬(家族)」関係を認める
・養子は不可、書面での委託によって「共同監護権」を認める
・書面での約定によって、共同での財産管理や遺産相続の協議も可
・2人のうち、どちらか一方の要求があれば、関係を終了できる
③「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」
・制度適用は20歳以上
・同性カップルに「結合」関係を認める
・養子は不可、「共同監護権」を認める
・夫婦財産制、遺産相続の権利を認める
・3親等以内の親族に、2人の「関係不成立」を要求する権利を認める
このうち、2017年の違憲判決を踏まえ、同性カップルに「婚姻」の権利を認める行政院提案の①案が、最も理想的とされていた。
ただし、養子が認められるのは、その子供が、パートナーのどちらか一方と血縁関係にある場合のみだった。
また、ここには書かれていないが、国際同性カップルの場合、すでに同性婚制度のある国出身のパートナー以外とは、結婚することができない。
つまり、日本と台湾の国籍のカップルは結婚ができないのだ。
この段階で最も理想的とはされているものの、異性カップルの婚姻では当たり前にできることがそのまま全て、同性カップルの婚姻でも可能となるわけではないのだ。
同性婚反対派より提案された②と③については、いずれも「婚姻」を認めるものではない。
また、「家屬(家族)」関係、「結合」関係との定義も曖昧で、実際にはパートナーがどのような立場になるのかが、不明確になっていた。
子供に関しても「共同監護権」に限定されており、どちらか一方のパートナーと血縁関係にあっても、法的に「両親」とは認められなかった。
また、「3親等以内の親族に、2人の「関係不成立」を要求する権利を認める」という項目の提案意義についても、議論が巻き起こった。
3つの法案が出揃った後、2019年5月14日には、最終決議前の調整を行う事前協議が行われたものの、②の「公投第12案施行法」を提案した同性婚反対派の委員は
「(自身の法案に)調整を加えるつもりはない」
と、途中退席。
③の「司法院釋字第748號解釋暨公投第12案施行法」を提案した委員に至っては、協議の場にすら現れることがなかった。
その結果、事前協議はほぼ何も進展がないまま打ち切られることに。
依然としてゴールが見えないまま、最終決議の日は迎えることとなった。
5月17日(金)最終決議当日。
この日の台北は、記録的な大雨に見舞われたそうだ。
まさにバケツをひっくり返したような雨が降り注ぐ悪天候だったそうであるが、そんな平日の朝に4万人近くの人々が立法院に集結。
結果は
贊成68、反対27
賛成多数で、行政院版の法案名「司法院釋字第748號解釋施行法」が無事可決されたのだ。
まだ、法案の名称が決まったにすぎないのには違いないが、与党・民進党が本気でこの法案を通そうとしている姿勢をここに来てついに、確認することができた瞬間であった。
そこから続く法案内容の審議でも、反対派の批判を受けながらではあったが、「司法院釋字第748號解釋施行法」の内容が一条ずつ、確実に可決が続き、ついに行政院版の「司法院釋字第748號解釋施行法」が全て可決された。
そしてさらにもう1つ、決議が行われた。
それは「跨國婚姻(国際結婚)」について。
当時の法案には(日本も含めた)同性婚制度のない国のパートナーとの婚姻に関する条項は盛り込まれていなかった。
この点について、立法院の第三政党・時代力量より、国際同性カップルの婚姻を実現するための提案も、同時になされていたのだ。
もしこれが可決されれば、同性婚はさらに平等なものになる。
どのような結果が出るのか、投票が始まった。
結果は、残念ながら、反対多数で否決されてしまった。
国際結婚に関しては、今回討論されている法案とは別に、「涉外民事法律適用法」という他の法律が関係してくるため、この場で可決するには準備不足、との判断がなされたようだ。
そしていよいよ、賛成票多数にて可決された法案について、最終確認の審議。
静まり返った会場に「この内容にて、異論のある人はいませんね?」と、立法院長・蘇嘉全さんの言葉が響き渡り、そして…
「司法院釋字第748號解釋施行法案草案,修正通過!」
ついに、台湾で同性婚が決まったのだ。
結婚の平等に向けて
アジアで初めて同性婚が実現したことは、台湾の同性カップルはもちろんのこと、日本に住む多くの人たちにとっても、希望を感じる出来事であった。しかしながら、まだ課題も残されている。
同性パートナーが外国人の場合、外国人パートナーの母国が同性婚を認めている国でなければ、台湾で同性婚ができない。たとえば、台湾人と日本人の同性カップルの場合、日本ではいまだに同性婚ができないため、台湾で結婚することができないのだ。同性婚が合法化されて3年が経った今でも、多くの同性カップルが結婚できずにいる事実に対し、同性婚と異性婚の「結婚の平等」が実現されるまで、声を上げ続けるのだ。
日本でも同性婚が可決されますように。
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