21年度からの中学校教科書でLGBTなど「性の多様性」についての記述が大幅に増えることが明らかとなった。
性の多様性について記載ある現行の教科書は5社6点。
来春からは9社17点に増え、科目も道徳だけでなく国語、歴史、公民、家庭、美術、保健体育に広がる。
同性婚訴訟や男女別制服の見直しなどの動きが背景となっているが、3科目で「性の多様性」について触れた出版社は、「社会の変化を取り入れた結果。消極的な意見もあったが、大事な観点であり、今後定着する話題だと判断した」と述べた。
保健体育のある教科書では、思春期の心身の発達を扱う章の冒頭で、「『普通』『常識』『みんなも言っている』そんな声を耳にしたら『そうじゃない人だっているかもしれない』という発想をみんなに持ってほしいと思います」という、LGBTも働きやすい職場づくりを支援する団体代表のインタビューが掲載。
国語の教科書には、ゲイであることをカミングアウトした日本文学研究者ロバート・キャンベルさんの文章が掲載。
公民の共生社会を考えるページでは、同性カップルのホテル宿泊拒否を違法とする国の見解を示し、「多様な性の意識を持つ人々が、社会の中で自分らしく生きるための取り組みも必要」と記載。
美術では同性カップルが描かれた生徒製作のポスターが紹介されている。
このような動きは今後も期待されるが、現状文科省の学習指導要領には「性の多様性」の記載がない。
そして、道徳では「異性の理解」、保健体育では「異性の尊重」を挙げている。
道徳では男女間の淡い恋を掲載する教科書が多いが、ある出版社は取り上げず、「不適切」だと検定意見が付いた。
この出版社は以下のように述べた
「生き方を考える道徳でわざわざ『異性の理解』を大きく扱うことに、ためらいがある。生徒に性的少数者は必ずいる。授業の進め方によっては男らしさや女らしさの強化にもつながりかねない」
性別と関係ない友情を扱ったページに「同性どうしの友情と異性との友情に、違いはあるだろうか」という一文を入れて合格したが、「次の学習指導要領の改定で『異性』はなくしてほしい」と希望している。