2017年度LGBT成人式 ~「成りたい人」への第一歩~

 

「2017年度LGBT成人式」が2018年1月13日、世田谷区 成城ホールにて開催された。

今イベントは特定非営利活動法人ReBitの主催によるもの。「『ありのままの自分』を誇り、『成りたい人』への一歩を踏み出してほしい」との想いから、2011年度より取り組んでいる。

来場者数は200名。参加者は思い思いの恰好をし、晴れやかななかにも、あどけなさが残る。なじみの顔を見つけて会話に花を咲かすものもいれば、緊張した面持ちも。それぞれの”晴れの日”があった。

 

来賓者には、世田谷区の保坂展人区長を筆頭に、多数の区議会議員/区会議員が。ほかの自治体の議員もおり、本イベントへの関心の高さが伺えた。なかにはLGBTを家族に持つ羽田圭二世田谷区議会議員や、自身がゲイであることをオープンにし当選した、石坂わたる中野区議会議員の姿もあった。

“お祝いの言葉”と共に、それぞれの自治体の現状を明かした。「ともに差別や偏見のない社会を作ろう」と呼び掛け、会場からは盛大な拍手が起こった。

LGBT成人式の「成人」とは、20歳になったことだけを意味するのではない。「成りたい人になる」ことを「成人する」と定義しており、その目標に向かって決意するイベントが「LGBT成人式」だ。参加条件に「年齢・セクシュアリティ不問」とあるように、会場では様々なひとたちが”成人の日”を迎えていた。また「今回で何回目かな」という声も聞こえ、年中行事のように参加し、毎回その決意を新たにする”新成人”もいるようだった。

「新成人の辞」には3名が登壇した。そのうちの1人「てつ」さんは、学生時代スカートを履くことが嫌で、”戦った”こと。それがキッカケで、LGBTについて学ぶ授業を設けて貰ったこと。何より、「行動することで、何か少しでも変わる」と学んだこと。そういった自身の体験を踏まえ、「自分らしく生きよう」と同志に呼び掛けた。

また「昔よりも良くなっている部分が絶対あるから、たまにはふり返って自分を誉めてあげよう」と語り、その温かな言葉に涙を流すひとも。

「しゅん」さんは女性で、パートナーも女性。ただジャニーズも、パートナーくらい大好きだ。「セクシュアリティのことは、わからない。ただ愛することはパワーの源」今回の登壇をきっかけに、「このままの私で、さらに好きなものを愛することを続けたい」と語った。また「小野春」さんは前夫との子と、現在の女性のパートナーの連れ子、計3人の母である。2年前乳がんが判明し苦しんだが、それを機に”成人”を決意。彼女はルーズベルトの名言を引用し、「失敗したらやり直せる」「だから、ささやかでも挑戦し続ける」と誓った。

登壇者は、境遇も様々。それぞれの人生訓に、新成人たちは静かに耳を傾けていた。

一旦の休憩を挟み、トークイベントが行われた。MCを松岡宗嗣さんと池田えり子さんが務め、登壇者にタレント・文筆家の牧村朝子さんと第チャンピオンである真道ゴーさん。そして、ユーチューバーのじゅんじゅんさんを迎えた。

それぞれの幼少期を回想したあと、話題は「カミングアウト」に。それぞれの経験をもとに話していくなかで、じゅんじゅんさんは、「社会的にまだまだ『声を上げること』が必要な時代。だからカミングアウトをする」と言う。

自らのことをカミングアウトした際、突然解雇された過去のある彼女は、「だからこそ行動を起こすためにYouTubeで発信している」と明かしていた。

またカミングアウト(=クローゼットから出ていく)をしても「扉を閉められることがある」という話に及び、真道さんは「それでも閉めたひとを責めるのは違う」とコメント。牧村さんも「もちろん『篭ってなくちゃダメなんだ』というのも違う」と発言し、「自分らしく生きる選択肢の一つとしてカミングアウトがあり、それを誰もがしたいと思ったときに選択できる社会になるといい」と結んだ。

 

また「誰と生きていく?」というテーマでは、恋愛やパートナーとのあり方についてのディスカッションが行われた。その中で、とあるアセクシャルを自認する人のコメントが流れた。

「『恋愛しない=孤独』ではない」と、あくまで「恋愛をするかしないか」は選択肢であるという。また「セクシャリティは『檻』でなく『宿り木』」「そこに固められるのではなく、出入り自由なものである」という提言を受け、トークは「誰と生きていくかにもさまざまな選択肢があること」まで及んだ。

ほかにも「働くこと」や「成りたい人ってどんな人?」といったテーマがあり、それぞれのなかで登壇者たちは新成人にエールを送った。

式の最後に”先輩たち”からのメッセージ映像が流れた。セクシャリティに限らず、国籍や障害といった理由でマイノリティである彼らは、”新成人”に願う。

「あなたのペースで自分を好きになっていけますように」

彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。

 

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