【動画】「性別なしのトイレが必要な理由」とは?

本日紹介したいのはTEDの動画。プレゼンターはトランスジェンダー(FtM)の当事者。「だれでもトイレ」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。しかし、なぜ「だれでもトイレ」が必要なのかを深く考えたことがある人は少ないはずだ。

間口が広く、床の高低差がフラットになっていて、車いすでも入りやすいトイレというイメージが強いかもしれない。しかし「誰でもトイレ」はトランスジェンダーにとってこそ、絶対的に必要な場所なのである。

TEDの素晴らしいスピーチ「Why we need gender-neutral bathrooms」(「性別なしのトイレが必要な理由」)を見てほしい。

※以下はスピーチ内容を一部文字起こししたもの。

 

「トランスジェンダーの私としては、もし自分に明日の世界を変えて、生きやすくできる力があれば、まず一番最初に、その全能の力を使って、性別のない個室トイレを公共の場所すべてに作ります。」

安心して使えるトイレは、空気や綺麗な水と同じように、生活する上では不可欠なもの。

私にとって公衆トイレや更衣室は最も咎(とが)められたり、嫌な目にあったりしやすい場所です。ドアの向こうから罵倒されることはよくあるし、ズボンを上げきってない状態で警備員に引きずり出されたりもしました。ジロジロ見る人、悲鳴をあげる人、ヒソヒソ話す人たちも。ある時は小さなおばあさんに 小さなバッグで顔をバシッとやられました。

トランスジェンダーにとって、男女専用トイレは大きなストレスの原因の一つになっている。アイヴァン・カヨーティ氏が話している通り、酷い態度をとられたりすることも現実だ。

皆さんの考えていること、わかりますよ。ほぼ正論です。男子トイレを使えばいいんだし、最近はたいていそうしてます。でもそれじゃあ、更衣室の問題は解決しませんよね。それに男子トイレは使わなくていいはず。男じゃないんですから。私はトランスジェンダーなんです。

自分の性自認(自分をどのような性別と考えているか)に合うトイレを使えば解決するという簡単な問題ではない。性自認は男性であっても、その前にトランスジェンダーなのだ。無理やり性別に当てはめて使わなくても良いトイレがあって当然である。

トランスジェンダーの子供たちは苦しみます。学校を中退したり、生きることすら諦める子もいます。トランスジェンダーの中でも、特に、いわゆる性別に当てはまらない若者はプールやスポーツジムを利用するとき余計な問題にぶち当たりますが、それだけでなく大学でも病院でも図書館でもそうです。空港で私たちがどんな扱いをされるか 話し出したら長いですよ?

トランスジェンダーが苦しむのは、学校や会社の中だけではない。病院、図書館、空港でも苦しんでいる現状がある。周りに支えてくれる友や家族がいれば少しは良いが、なかなか分かってくれる人は少なく、打ち明けるにもかなりの勇希が必要となる。その結果、自死を選んでしまう当事者も多い。

「こういった場所を、誰でも利用できる真に開かれた場所にできないのなら、はっきり言って もう公共の場所〉と呼ぶのをやめるべきです。そして、ただ認めましょう。本当は一部の人々にしか開かれていないんだと。2つの性別の枠に収まる人たちに限るんだと認めればいい。」

トイレは「公共の施設」だが、その公共性の範囲は「男性と女性」のみに限定されている場合がほとんどだ。それは真の意味で「公共の場所」とは言えない。だれもが自由に使えて初めて「公共の場所」になるはずだ。

というわけで、性別なしの個室トイレを作っちゃいましょうよ。運動着に着替えられる小さな椅子もつけましょう。子供たちのために世界を一晩で変えられるかって言ったら、それは無理だけど、そんな世界から逃れられるような、安全な個室は作ってやれる。たとえ1分間だけだとしてもね。これならできます。

性別なしのトイレがあれば、トランスジェンダーはもちろん、その他の全ての人にとっても有意義な施設になる。自分の身体に悩みやコンプレックスを持っている人、障害を持っている人、みんなの前で着替えることに抵抗がある人にとって、「安全な個室」として使えるからだ。精神が不安定になった時に逃げ込む場所にもなる。

「トランスフォビア(トランスジェンダーを嫌悪する人)を一晩では変えることはできません。でも、すべての人々に着替える場所を与えることはできます。そうすればすべてが上手くまわって、私たち皆にとってもっと安全な社会を作っていくことができます。

「だれでもトイレ」は特別な人だけが使うものではなく、全ての人が使うことができる素晴らしいスペースだ。トイレとしてももちろん使えるが、着替えのための更衣室になったり、小休憩の場としても使うこもできるし、万が一のときのシェルターにもなる。もっと多くの場所に設置されることを願うばかりだ。

one: LGBTの当事者としてFlag編集部に携わる。LGBTの人生・キャリアに関連した記事を中心に執筆。ご意見・ご連絡はこちらまで:info@rainbowflag.jp