LGBTに関する書籍をFlag視点で読み解きます。 ご紹介する書籍は『職場のLGBT読本』(実務教育出版)。 著者はNPO法人グッド・エイジング・エールズ理事の柳沢正和氏、 NPO法人虹色ダイバーシティ代表の村木真紀氏、 All Aboutのセクシャルマイノリティ・同性愛カテゴリのライターを務め、数々の啓発活動を行っている後藤純一氏。 まさに現在進行形でLGBTに深く関わっている方々による著作です。 本稿では『職場のLGBT読本』の数ある章の中から、「職場でのカミングアウト率」「差別的な言動」「なぜ同性愛者になるのか」 の3つをピックアップしました。
01.職場でのカミングアウト率
「自分の職場でカミングアウトしている人っているのだろうか?」 当事者なら誰もが気になることです。その 誰もが気になるこの数字に関するデータについても細かく載っています。(同:103ページ) 職場でカミングアウトしている確率はゲイで40%、レズビアンで43%です。 カミングアウトと言っても「信頼できる友人のみ」「直属の上司だけ」というように至って限定的であると推察されています。 自分のセクシャリティを堂々と全社的にオープンしている人はごく少数でしょう。 著者の一人である村木氏は「カミングアウトで人間関係が悪くなる可能性もあり、〈賭け〉の状況になっている」 と述べており、当事者がカミングアウトできない状況を解説しています。
02.差別的な発言は普通にある
調査では当事者の70%が職場で差別的な言動を耳にしたと回答しています。(同:94ページ) 「職場ではきっと大丈夫だろう」という期待には叶わず、 データが示している通り、差別的な言動は日常的にあるのです。 しっかりとこの現実を見て受け止めなくてはいけません。 この本は「職場」に特化していますが、この問題は職場に限らず「家庭」「学校」でも同じです。 差別的な言動により、仕事や勉学の生産性が落ち、ストレスを貯めやすくなってしまうということが社会問題になっている。
03.同性愛にどうしてなるの?
「人はなぜ同性愛者に生まれるのか」という興味深いページもあります。
(同:46〜49ページ) 結果から言ってしまえば、現状では「よく分からない」ということなのですが、 このように考えてみると確かになぜかは気になること。 同性愛を科学の観点から著した本にサイモン・ルベイの『クィア・サイエンス―同性愛をめぐる科学言説の変遷』がある。 遺伝子、ホルモン、脳、心理学など様々な観点から検証が行われているようです。 その中で明らかになったことがあります。 それは「同性愛者と異性愛者で脳の一部に明らかな違いが見つかった」ということ。 これは生物学的な事実であり、単に「遊び」のような感覚で同性愛をしているわけではないという根拠にもなっています。 しかしそれが生まれつきのものなのか、後天的なものなのかは未だに「不明」です。 遺伝や生まれ育った環境要因なども「関与していないとは言えない」という状態です。 科学の発達で徐々に解明されていくのを待ちます。
04.まとめ
職場における環境はLGBTにとって、まだ優しいものとは言えないのが現状です。
しかし中にはこの問題に取り組み始めている企業もあります。 (その企業の活動も本の中で解説されています。)
LGBTでない人にとってはもちろん勉強になる本ではありますが、 LGBTにとても大変勉強になる本です。 読んでみると「意外と知らなかった…!」という発見が多くあります。 自分たちの境遇を知るという意味で、是非LGBTに関わる人には読んだらいいのではないでしょうか。