先日の5月24日、台湾の憲法裁判所にて「同性結婚を認めないのは憲法が規定する婚姻の自由や平等権に違反する」という判決がなされました。これにより、台湾では同性婚が正式に合憲化され、2年を目処に法整備も徐々に整えられていくことになります。
今回の判決で台湾はアジアで初めて同性婚が可能な国となりました。以下に今回の台湾の判決文を記載します。素晴らしい判決文なのでぜひ読んでもらいたいです。
(以下、NPO法人EMA日本さんのFacebookより引用。)
「同性婚を認めたとしても、異性婚を前提としてきた社会秩序が変わってしまうわけではない。むしろ、婚姻の自由を同性カップルにも広げることで、社会の安定が強化されるであろう。同性愛者であれ異性愛者であれ、愛する人と肉体的にも精神的にも一緒にいたいと思う気持ちやその必要性は変わらない。婚姻は人間の尊厳を擁護し、健全な個性を育むために重要である。
我が国(台湾)においては、同性愛者は社会から否定されてきた。それゆえ、彼らは社会から隔離され、孤立し、事実上および法律上の差別に苦しめられてきた。また、社会の偏見により、彼らが民主的な方法で法的な不利益を改めることも困難であった。
民法の婚姻規定は、子どもを産むことを前提条件とはしていない。婚姻した一方が子どもを作れないからといって婚姻が無効になることもなく、離婚の理由にもならない。子どもを産むことが婚姻の基本的な要素であるとは全く言えない。ゆえに、自然な妊娠によって子どもを授かることができない同性カップルについても、そのことを理由に婚姻を認めないことは、合理性を欠く。
同性婚が認められても、同性カップルは異性カップルと同様、婚姻中も離婚後も権利と義務を負うのであり、社会の基本的倫理は不変である。社会的倫理に影響することを理由に同性婚を認めない、つまり同性カップルの人たちに異なる扱いを認めることは、全く合理性を欠き、憲法の定める平等の原理に反するものである。」
◆「子どもを産めるかどうか」が婚姻の前提条件ではない
判決文にあるように「婚姻は子どもを産むことを前提条件としていない」という訳です。実際、現在の異性婚夫婦の中でも「子どもをあえて持たない夫婦」もいれば、「子どもを持ちたくても持てない夫婦」もたくさんいます。全ての婚姻に子どもを産むことが義務付けられているかと言えば、当然そうではありません。子どもを産まなくても(産むことができなくても)でも婚姻は認められています。「『子どもを授かるかどうか』ということを理由に婚姻を認めないのは合理性を欠く」という判決はとてもクリアで分かりやすい判決です。
◆「みんなが認めてくれていれば、あえて結婚しなくても良いのでは?」
様々な調査で明らかになっていますが、「同性カップルがあっても良いと思うし、結婚もありだと思う」という意見は若い世代を通してとても増えてきています。しかし同時に「(同性婚にも賛成だけど)別にあえて結婚という形を取らなくてもいいんじゃない?」「何でそんなにこだわるの?」という意見も多く聞かれるようになりました。
もちろん男女間の「事実婚」のように、あえて結婚という形を取らない同性カップルも今後出てくると思います。しかし、それはあくまで「結婚」という選択肢がある中での「事実婚」という選択なのです。最初から「結婚」という選択肢が取り得ない中で、「事実婚で十分じゃない?」「何でそんなに結婚したいの?」というのは大袈裟に言えば「同性カップルは事実婚で我慢しておけ」と言っているようなものなのです。
◆「婚姻」の意味
判決にもあるように「同性愛者であれ異性愛者であれ、愛する人と肉体的にも精神的にも一緒にいたいと思う気持ちやその必要性は変わらない。婚姻は人間の尊厳を擁護し、健全な個性を育むために重要」ということです。当然、婚姻にあたっては義務や責任も新たに負うことになりますが、社会システムの中で「正式に家族として認められる」ということはとても大きな前進になります。そして、今までそれが認められなかった歴史や過去の道のりを考えると、今回の判決はまさに歴史の転換点でありとても重要な意味を持ちます。
アイキャッチ画像はハフポストより引用