「(諸外国と比較して)日本では性的マイノリティーへの差別が少ないのは、正しい知識を持っていないという裏付けである」ーーー。同性愛者に批判的な発言をしている東京都杉並区の小林優美区議に対して、批判が相次いでいる。特に、ゲイ当事者であるジャーナリストの北丸雄二氏の批判が興味深い。
(小林氏の発言に対して)ただの俗説、うわさレベルを検証せず、公的な議会という場で発言するのは知的劣化であり、それを許す日本社会も幼い(東京新聞朝刊28面 2016年2月23日)
北丸氏の批判を読み、筆者は、近年の論壇の場において頻出している「反知性主義」(実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度)という言葉を思い出した。
この言葉を踏まえれば、小林氏は反知性主義者なのかもしれないが、それに対して筆者は大きな危機感を抱いている。
作家の佐藤優氏が〈(反知性主義により)ここから荒唐無稽な物語が生まれることも多い。高等教育を受けた官僚、法曹、学者でも反知性主義に足をすくわれることは珍しくない。〉(佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.067)と述べているように、日本の中枢を担うエリート層が、反知性主義に翻弄されているからだ(ちなみに、小林氏は東京外国語大学出身である)。
では、反知性主義にならないためには、どうすれば良いのか。前出の佐藤氏は、下記のように述べている。
反知性主義に対抗するために重要なのは、知性を復権することだ。それは主に読書によってなされる。/知性の復権は、優れた先人の業績を解釈もしくは再解釈することによってのみ可能なのである。(前掲 Vol.062)
反知性には、知性で対抗することしか道が無いということなのだ。
(画像は小林氏のブログより)